2008-06-06

短信ラノベ途中感想

珍しく勢いづいたついでに、ここ数ヶ月で読んだライトノベルの感想も簡単に書いておく。
なんかこの日記がますます誰も読まない方向に驀進してる気がするが、まあいいだろう。


ヤマグチノボル『ゼロの使い魔』

最新14巻まで購入。ツンデレ萌え業界のファストフード路線を快走するラブコメファンタジーシリーズ。
まあ最早ツンデレもヤンデレも通り越して甘々らぶらぶなんだが、なんにせよ徹頭徹尾エンターテインメントだと割り切った萌えジャンクフードである。十年後には確実に時代遅れなんだけど、気にしてない。ジャンクフードだし。
日野聡と釘宮理恵の声で脳内朗読できますが、何か。みたいな。


支倉凍砂『狼と香辛料』

最新8巻まで購入。異世界ファンタジーだが剣と魔法ではなく商人モノ。
金は剣よりも強い、という世界で駆け引きを話の核に持ってくるのだが、手放しに上手い。とりあえず特殊能力で殺し合ってればいいんだろ? みたいな安直なライトノベルへの素晴らしいアンチテーゼであると同時に、これまた甘々らぶらぶ系だったりもする。
だが、(8巻でちょっと盛り返したとはいえ)やや中だるみ気味なのが残念。脱線せずにヨイツ方面を目指してくれると嬉しかったのだが。


入間人間『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』

2巻まで購入。西尾維新ライクなヤンデレスキー。
主人公みーくんの "嘘だけど。" という独白のドライさがたまらない。『スローターハウス5』の "so it goes" には遠く及ばないが、あの系統。
1巻にして既にどこにも行けない感が漂っていて、それが逆にいい。あとみーくんと奈月の掛け合いもナイス。


森岡浩之『星界の紋章』

1巻購入。スペースオペラにライトノベルの文法を持ち込んでみました、みたいな。
ラノベオタの基礎教養だと思って買ってきたが、予想通り設定の山。宇宙を舞台に設定しまくりで大風呂敷を広げておいて、第一巻は間の悪いところで終わるあたり、『ゼノサーガ』にそっくりで笑った。まあこの先に期待は持てるので読む気だが。
衝撃的なのは絵。画風が古いとかころころ変わるとかはまあいいとしても、戦旗II表紙のジントは頭蓋骨陥没っぽいし、戦記IIIになるとなぜか幼くなるし。本当にガイナックスの偉いヒトなのか。


田中ロミオ『人類は衰退しました』

最新3巻まで購入。衰退したヒト文明に代わり、高度な科学力を誇り甘いものと楽しいことが大好きな妖精さんたちに支配(?)された世界。
普通に面白い。ロミオなのに普通に。作者が作者なので、いつやらかしてくれてもおかしくないという期待と恐怖がありつつ、一方でこのまま仄めかし系ぽけぽけほわほわ路線をキープしてもいいなあ、という幸せな葛藤が素敵。
しかし「衰退した人類」を象徴してヒトが全員匿名なのはわかるんだけど、「孫ちゃん」には無理がないか流石に。


葵せきな『生徒会の一存』

最新2巻まで購入。ハーレム志向を公言する主人公が、美少女だらけの生徒会室で彼女らとだべるだけの話。
あらすじの印象よりは面白かったが、2巻も最後までこうだと流石に食傷気味。2巻の新キャラの立ち位置もよく分からないし。伏線を張っているのは分かるが、3巻でも話が動かないようなら切るか、というライン。


高遠豹介『藤堂家はカミガカリ』

1巻途中で放棄。異世界人たちが人間の護衛のために殺し合いしにくる話。でも実態はコメディ。
帯が「スピーディで明快な文体が、読者を(中略)離さない。この文章力は麻薬的だ」っていう高畑京一郎のアジで、騙されたつもりで中も見ずに買ったんだが、まあ騙された。地の文の視点は端々でぶれるし、シリアスシーンにも緊張感がまるでない。殺し合いしてる場面で「茶髪が倒れてぴくぴくしていた」とか、(書かないけど)心底どうでもいい理由で一時休戦とか、全体的に文法がギャグマンガなのだ。そりゃテンポはよくなるかもしれないが……。
逆に言うとギャグとして読めば楽しめたのかも知れない。web上はそこそこ好意的な評価が多いのは、そういう読み方をされているからのようだ。


杉井光『神様のメモ帳』

最新2巻まで購入。強いて言えばライトノベル版『池袋ウエストゲートパーク』。
絵買いしたが、話も当たりだった。
自称「ニート探偵」アリスが萌え萌え美少女風味で一瞬絶望したが、青春風味探偵モノとして手堅いプロットで安心して読めた。石田衣良だとちょっと悪趣味な暴力への指向も、うまいことボケてライトノベルの枠に押しこんでいる。帯で文章力が絶賛されてる本よりもはるかにまともで筋のいい文章だし、続編が楽しみ。
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2008-06-05

『青い花』1~3巻読了

志村貴子『青い花』1~3巻読了。

二度書き直した。
そして三度とも削除した。

本作の感想である。
どうやら、私の語彙では足りないらしい。

五段階評価でいえば5だ。傑作かといえば傑作だ。
非エロ目・水彩系亜目・百合マンガ科・悲恋風味亜科だ。

だが足りない。そんなものではないのだ。
本作の微妙なもどかしさだの私の悶え具合だのを記述する適切な表現が、どうしても浮かばない。

だから残念ではあるが、本作を勧めてくれた友人Yの言のキてる具合を、要約して引くに留めたい。曰く、

必ず一人で、まとまった時間をとって、優しい気持ちで、ゆっくりと慈しむように、読め。
できれば、午後の柔らかな陽射しの中で。

友人Yが真顔であったこと、また私がこれに大筋で同意することを、書き添えておく。
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2008-06-05

『リピート』読了

乾くるみ『リピート』読了。

タイトルで北村薫の『リセット』や『スキップ』を連想して手にとったが、間違っていなかった。まあどちらも過分にケン・グリムウッドの『リプレイ』の影響を受けていると思われる以上、それも当然かもしれない――と、並べたタイトルの傾向から読み取れるとおり、タイムトラベルものである。

記憶を保ったまま十ヶ月前の世界に戻れる「リピート」現象に誘われた十人の男女が、しかし戻った先で次々と怪死していく。誰が、なぜ、どうやって――。「『リプレイ』と『そして誰もいなくなった』のあわせ技」と、なにやらぶっちゃけた感じの文句が帯に書いてあるがそのとおりの展開で、にも関わらず結構引き込んで一気に読ませる。

Amazonのレビューにも言われるとおりラストは少々弱いのだが、真相には唸った。


キャラクタ面では、登場人物の貪欲さが強く記憶に残っている。リピートしているという特権的立場を利用して、己の願望充足と保身しか考えない、ある種潔いキャラクタばかり登場するし、それは主人公も例外ではない。
タイムトラベルものというと、ハインラインの『夏への扉』か西澤保彦『七回死んだ男』、高畑京一郎『タイム・リープ』あたりを真っ先に連想するのだが、こうまで「タイムトラベルによる利益追求」を真っ向から扱った内容は見たことがなかった。リアルなようでいて不思議と嘘くささを感じさせる彼らの行動指針や発想はむしろ、『デスノート』や『コードギアス』の主人公のそれに近い。冷たく熱く、愚かだ。

読み終えてぼんやり考えていたのだが、ふと、これは反動ではないか、と思った。
希薄化しつつある我々の欲望の、反動。
バブリーな時代が終わって、失われた10年をやり過ごした我々である。いざなぎ越えとは言ったが消費者物価指数はむしろ落ちた。若年層の自動車保有率は淡々と下落している。結婚率など上がるという予測を聞いたことすらない。現実世界に欲望することを、我々は少しずつ諦めているように見えてならない。
一方でしかし、欲望のないところに物語はない。願望とその成就、欠落とその回復、というのがシェークスピアから連綿と続く物語の基本構造である。まず欲望がないことには、カタルシスも達成感も自己実現も何もないのだ。
だから物語の消費者である我々に、今もっともリアルなのは「何かを切実に欲望したい」という欲望であるように思える。欲望の希薄化への反動として、欲望することそのものを物語に欲望した――その帰着が、本作の主人公のような滑稽なほど貪欲なキャラクタなのではなかろうか。とそんなことを考えた。

……まあ、知ったかぶりなんだけど。
日本経済など私はよく知らないのだ。


どうでもいいが、解説の大森望がまたわかってる人で、東浩紀の「ゲーム的リアリズム」を引き合いに出したくだりにはにやりとさせられる。まさか本作に『School Days』を持ち出す解説を読むとは思わなかった。
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2008-06-05

『こどものおもちゃ』読了

小花美穂『こどものおもちゃ』読了。

――オトナなんて、クソくらえ。

一巻の柱にも大体同じことが書いてあるそうだ(私は読み落としたようだ)が、印象的だったのは「大人」がほとんど誰もいないことだ。思い返せばことごとく、どこか病んでいる、何がしかの問題を抱えた「大人」になりきれない「オトナ」たちばかりだった。

学級崩壊に泣きだす小学校教諭。小学生のアイドルに拾われてヒモにされたホームレス。校内で同僚と「ちちくり」あい、児童に恐喝される小学校教諭。DVが元で離婚する夫婦。出産による母親の死をきっかけに崩壊した家族。14歳で出産して子供を捨てた母。子供嫌いで陰湿ないじめを繰り返す中学校教師。ノイローゼ混じりのヒステリーで息子を追い詰め、結果息子が傷害事件を起こしてしまう母親――。

枚挙に暇がなさすぎる。

同時に、それを叱り、正し、治していくのがいつも子供たちであるというのも、本作の印象的な部分だろう。
「オトナ」たちの問題はもちろん、子供たち自身の問題を解決するのも――つまり例えば錯乱状態の小森を樹海から連れ戻すのも、直純のファン(子供)たちによる沙南への暴行を止めるのも、沙南を二度にわたり人形病から救うのも――全て子供たちなのだ。もちろん子供たちが主役の作品なのだが、それにしても徹底している。
唯一に近い「大人」としての立ち位置にある倉田実紗子が、ほとんどの場面でリスの巣を頭に載せている、という現実にはまずありえない描かれ方をしている点も興味深い。要するに本作は、ギャグマンガの文法によってでも、常識的な「大人」の不在を描きたかったのだろう。

作中、千石に対して「教師も人間だってことぐらい判ってるんだよ」という趣旨の発言を羽山がしているが、結局これが本作に一貫するテーマであったように思う。

たとえ成人していようと、みんな欠点と問題だらけの「人間」なのだ。

「オトナ」に対抗できるキャラづけを突き詰めた結果、子供の側(主に沙南)が超人化してしまったきらいはあるが、総じて面白かったと言える。『新世紀エヴァンゲリオン』の後半、葛城や赤木、ゲンドウなど当初「大人」として描かれてきたキャラクタが次々と弱さを露呈していく過程と重ねて読んだのは、私だけではあるまい。


余談。報われない子萌えとしては、(七巻だったかの)風花の「う…うち… 別れたらへんで!」という台詞が最高にキてたこと、付記しておく。
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2008-06-05

『GOTH』読了

大岩ケンヂ『GOTH』読了。

乙一の同名小説の漫画化。乙一を読んだことはないのだが、それでも驚くほど世界観にマッチした画風だと感じた。端正で静謐で怜悧で、暴力的。見事、の一語に尽きる。

しかし乙一については、どうしてか石田衣良と同質の距離感を感じる。
悪く言うとどうも「お前らどうせこういうのが好きなんだろ? はっ」という考えが各所にちらついて見えるのだよな。まあ、私の自意識過剰といえばそうだし、実際好きなんだけどさ、そういうの。
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