まぜた。
あまりにも汚いトイレに、どこかで辟易していたのだと思う。
新発売、とどかどかと陳列された洗剤を手にとったのは、我ながらごく自然な流れだった。
なんというか、まっくろくろすけもかくや、という黒ズミぶりなのだ、うちの便器は。あのにっくきカビ共、今度こそ撃滅してやります、とばかり私は意気込んだ。
それが確か、先々週のこと。
……だった、のだが、話は唐突に今日に移る。
忘れていたのだ。
意気込みとか言ってたのはどこの誰ですか、と独りで突っ込みを入れたが、しかし、新しいものを試すのは楽しい、というのが私の性分だ。いざ使う段になったら、調子に乗って用法に書いてある1.5倍くらいの分量を使った。
うん、塩素くさい。
我ながら意味不明なところに満足して、ついでにいつも通りに掃除しようと思い立った。
手始めに便器蓋あたりをやっつけようか、とトイレ用掃除シートを手にとる――。
――そして、話はもう少し先に移る。
掃除を終えてしばらく後、用を足そうとした時だ。
微かに、それが臭ってきたのは。
洗剤は効果抜群で、随分と白くなった便器はいいのだが、それにしてもなにやら塩素くさいだけにしては鼻を突く、嗅ぎ慣れない臭いだった。
換気扇つけておきますか、とそこまで考えて。
嫌な予感がした。
既に予感ではない、という矛盾した予感だった。
あの洗剤。塩素系だ。
まぜるな危険、塩素ガス。
しかし、確かにおなじみ「まぜるな危険」の表記はあったが、酸性の洗剤を混ぜた覚えがない。というか、塩素ガスといえば、第一次大戦で大活躍した非人道的兵器の雄っていうか、要するに化学兵器である。チキンの私が他の洗剤を警戒しないわけがないがないのだ。ならどこに混ざるものなどあったか。
と、そこでもう一度嫌な予感がした。
慌ててトイレを飛び出る。
冗談、思わず呟いてしまった。
息を止めて再突入、トイレ用掃除シートの箱を引っつかんでもう一度飛び出る。被疑者、確保――! ていうかこいつしか疑うものがない。とりあえず換気扇をつけて、箱を眺めた。除菌とか消臭とかミントの香りとかどうでもいいことが色々書いてあるが、例の「まぜるな危険」はどこにもない。はずれ、だろうか。
しかし。疑念を捨てきれずに成分表示を眺めて、見つけた。
液性。弱酸性。
じゃくさんせーぇ♪ と、何かのCMのフレーズが頭をよぎった。
脱力しながら、私は頭を抱えた。
------------
考え直すと恐らく、塩素系の洗剤を流すのと一緒に、弱酸性のシートも流してしまったのが祟ったのだと思う。一歩間違えたらもっと盛大に塩素ガスっただろうと思うと落ち着かない。
いやはや、人生まさか自分が「まぜるな危険」を混ぜる日が来ようとは思わなかった。というか人生、まさかトイレで終わりに近づくとは思わなかった。
なんか今月こんなのばっかだよ、全く。
自覚症状(咳とか吐き気とか)が何もなかったこと、シートの側に警告表示がなかったことから、特に何も処置しなかったが、塩素ガスは本気でやばい。私と同じ間抜けをやらかすひとがいたら、つべこべ言わずに病院行くことをお勧めしておく。一応。
新発売、とどかどかと陳列された洗剤を手にとったのは、我ながらごく自然な流れだった。
なんというか、まっくろくろすけもかくや、という黒ズミぶりなのだ、うちの便器は。あのにっくきカビ共、今度こそ撃滅してやります、とばかり私は意気込んだ。
それが確か、先々週のこと。
……だった、のだが、話は唐突に今日に移る。
忘れていたのだ。
意気込みとか言ってたのはどこの誰ですか、と独りで突っ込みを入れたが、しかし、新しいものを試すのは楽しい、というのが私の性分だ。いざ使う段になったら、調子に乗って用法に書いてある1.5倍くらいの分量を使った。
うん、塩素くさい。
我ながら意味不明なところに満足して、ついでにいつも通りに掃除しようと思い立った。
手始めに便器蓋あたりをやっつけようか、とトイレ用掃除シートを手にとる――。
――そして、話はもう少し先に移る。
掃除を終えてしばらく後、用を足そうとした時だ。
微かに、それが臭ってきたのは。
洗剤は効果抜群で、随分と白くなった便器はいいのだが、それにしてもなにやら塩素くさいだけにしては鼻を突く、嗅ぎ慣れない臭いだった。
換気扇つけておきますか、とそこまで考えて。
嫌な予感がした。
既に予感ではない、という矛盾した予感だった。
あの洗剤。塩素系だ。
まぜるな危険、塩素ガス。
しかし、確かにおなじみ「まぜるな危険」の表記はあったが、酸性の洗剤を混ぜた覚えがない。というか、塩素ガスといえば、第一次大戦で大活躍した非人道的兵器の雄っていうか、要するに化学兵器である。チキンの私が他の洗剤を警戒しないわけがないがないのだ。ならどこに混ざるものなどあったか。
と、そこでもう一度嫌な予感がした。
慌ててトイレを飛び出る。
冗談、思わず呟いてしまった。
息を止めて再突入、トイレ用掃除シートの箱を引っつかんでもう一度飛び出る。被疑者、確保――! ていうかこいつしか疑うものがない。とりあえず換気扇をつけて、箱を眺めた。除菌とか消臭とかミントの香りとかどうでもいいことが色々書いてあるが、例の「まぜるな危険」はどこにもない。はずれ、だろうか。
しかし。疑念を捨てきれずに成分表示を眺めて、見つけた。
液性。弱酸性。
じゃくさんせーぇ♪ と、何かのCMのフレーズが頭をよぎった。
脱力しながら、私は頭を抱えた。
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考え直すと恐らく、塩素系の洗剤を流すのと一緒に、弱酸性のシートも流してしまったのが祟ったのだと思う。一歩間違えたらもっと盛大に塩素ガスっただろうと思うと落ち着かない。
いやはや、人生まさか自分が「まぜるな危険」を混ぜる日が来ようとは思わなかった。というか人生、まさかトイレで終わりに近づくとは思わなかった。
なんか今月こんなのばっかだよ、全く。
自覚症状(咳とか吐き気とか)が何もなかったこと、シートの側に警告表示がなかったことから、特に何も処置しなかったが、塩素ガスは本気でやばい。私と同じ間抜けをやらかすひとがいたら、つべこべ言わずに病院行くことをお勧めしておく。一応。